[横歴通信7月]例会開催7.3

当会だけの話ではないと思いますが、この2年ほどの間コロナ禍により、例会やイベントの中止が強いられています。7月例会は前日からの雨が尋常ではないことはわかっていましたが、執行部や発表者など処々の思いがあり開催されることになりました。足元が良くない、交通事情が悪いことなどで参加を見合わせた会員諸兄姉にお詫び申し上げます。併せて関係者の皆様が今回の豪雨災害の被害に遭われなかったことを願ってやみません。
このような事情の中、ご参加いただいた会員並びにゲストの皆様には御礼申し上げます。ここ5年以上の間、記憶にないほどの参加数となりましたが、熟練の論客が揃った発表は中身の濃い充実した例会となりました。
今月の参加者は58名。ゲスト6名、会員52名でした
なお来月は通常休会月ですが、発表者が順延つづきのためオリンピック(7/23~8/8)終了明けの8月14日(土)に開催いたします。

開催にあたり

木村髙久会長
本日は足元の悪い中、ご参加いただきありがとうございます。またこのような天候にもかかわらず、ご来場いただいたゲストの皆さんもどうぞ本日の発表を楽しんでください。さてこれからの季節、だんだん暑くなってきます。心配なのはコロナウィルスだけでなく、熱中症にも十分気を付けていただきたいと思います。
1ヵ月ほど前のニュースでご存知の方が多いと思いますが、「北海道・北東北の縄文遺跡群」がユネスコによるイコモスの評価で世界遺産への記載が適当という勧告を受けました。原始時代の研究者をはじめ我々にとっても大変喜ばしいことで、今後が楽しみになってきました。

7月例会発表のポイント
瀬谷俊二郎さん 演題『膨張の70年(PART1)』
今回のタイトルにある70年とは、明治維新から国家体制を西欧諸国に並ぶ近代化に舵を切り、世界大戦の渦中に埋もれていった我国の直近の歴史である。これを瀬谷氏は鳥の目の史観で捉えられたという。その発端が明治維新後、琉球藩を設置し、琉球も近代国家に組み入れるという過程の中、宮古島島民が台湾住民に殺害されるという事件が起き明治政府は台湾へ出兵し、琉球にも軍隊と警察を置き、数年後廃藩置県に伴い沖縄県の設置を行ったことだった。我国が領土を守る、他の領土を奪うという戦いの幕開けだった。これ以降は、古代より道筋のわかる朝鮮半島を経由する大陸へ矛先が向くのである。
瀬谷氏の総括は「日本の近代化、膨張の70年とは、科学的技術を伴ったものでなく、精神力という得体の知れないものに突き動かされ突き進んできたと論じている。これは薩長が新しい国造りを錦の御旗の下、帝をシンボルとして始めたことに起因するのだろう。

森岡 璋さん 演題『綱吉と柳沢吉保』
綱吉の治世は生類憐みの令に代表されるように、犬の扱いに関する極端な事例が針小棒大に取り上げられ、私生活もスキャンダラスなイメージが定着している。森岡氏は、綱吉は極めて博識で頭の良い将軍で、命を大切にするという慈悲深い考えの持ち主であったと論じている。そうした姿を柳沢吉保の『楽只堂年録』、吉保の側室正親町町子の『松蔭日記』を用いてひも解いてくれた。
学問好きの綱吉に、吉保はじめその多くの家臣が学びを通じて交流を深めたことなど、
なるほど吉保の大出世にも合点がいく話であった。歴史を学ぶ楽しみは史実の起承転結を追うことが一般的だが、特定の人物を取材記者のように調べ上げていくのも楽しいことに違いない。藤原道長の『御堂関白記』(世界最古の直筆日記/ユネスコ記憶遺産)もしかり、古今東西日記ほど人間味のある日々の暮らしを映し出してくれるものはない。まずは同氏のレジュメを目で追っていただくと良い。

古谷 多聞さん 演題『ノモンハン事件・雑記/前編』
古谷氏の本発表の根底にあるのが歴史を語る上での言葉使いのこだわりである。歴史の転換となる戦を「乱」「変」「役」「陣」と称するが、これらは日本独特であるが意味を知れば理解できる。ノモンハン事件を「戦争」と呼ばず「事件」としたことに、同氏は愚かな集団日本陸軍の本質が隠されていると指摘する。ノモンハン事件の顛末は横において、その内実はまさに戦争そのものでしかないことが丁寧な解説でよくわかる。明らかな敗戦を「事件」と称することで結論をゆがめる意図が感じられるという説にも納得がいく。我々多くは第二次大戦の日本軍の愚かさは肌で感じている。同氏が列挙する事件の要点と私見を拝見するにつけ、このような馬鹿なことが起きていたのかと痛感する。結びの私見に「この一件は関東軍がソ連の挑発行為に引っかかった」と示している。同氏が指摘するように現在もそうした動機は身近にある。

*発表者のレジュメは「研究発表」に掲載しています

『今後の予定』

8月例会は8月14日(土)に開催。

*講演内容は「横歴 例会のご案内」をご覧ください
◆遠田千代吉さん 演題『二上山に偲ぶ 大津皇子山頂墓』
◆武田 収功さん 演題『水銀の道 飛鳥池工房遺跡の出土品』
◆宮下 元さん 演題『はじめにコトバありき?』
*発表者のご紹介は8月1日頃にホームページに掲載いたします。
◆今後のスケジュール
●9月例会 9月11日(土)横浜開港記念会館
●10月例会 10月2日(土)横浜開港記念会館
●横歴「はま寄席」10月24日(日)横浜開港記念会館
●11月例会 11月9日(火)横浜開港記念会館
●秋の歴史散歩 11月28日(日)探訪地未定
●12月例会 12月7日(火)関内ホール/小ホール

会報『歴研よこはま83号』の原稿募集を開始しています。

◎本号の特集テーマは「わが故郷の偉人」です。 
次号表紙を飾る写真を募集しています。カメラを片手に散策の折の素敵な写真を応募ください。』

TOPICS。

鹿鳴家河童さん(当会会員:寺田隆郎さん)が出演する寄席開催!!
来る8月13日(金)溝の口 てくのかわさき(てくのホール)で行われる社会人落語の会「やかん寄席」が行われ、当会会員寺田隆郎さんが出演します。寺田さんは秋の横歴主催「横歴はま寄席」の座長を務める予定です。(入場無料)お時間があればぜひ応援に出向いてください。
2021年8月13日(金)川崎市生活文化会館てくのかわさき てくのホール
第1部 開場10時 開演10時30分(河童さん出演)
第2部 開場13時30分 開演14時